浮世絵漫歩 7 歌川国芳の道外十二支4

左、たいこうち 午 祭屋台の囃子の稽古か相談か、一杯やりながらの場面です。太鼓は馬の皮を張りますから馬の腹には太鼓の巴紋、狸は腹鼓から鼓の担当、狐は初午の鳴り物から、ちゃんぎり、よすけとも言われる当り鉦を担当して楽しくやっています。浴衣の柄…

浮世絵漫歩 6 歌川国芳の道外十二支3

右、冨士こしの辰 古来画題になっている「富士越しの龍」です。北斎の絶筆も「富士越の龍」でした。国芳は北斎の絶筆を見たでしょうか。富士登山・浅間信仰が大変に流行し、富士講・浅間講という仲間が作られ、江戸の各地に小型の富士山に祀られ、団体で参詣…

浮世絵漫歩 5 歌川国芳の道外十二支2

右、蛇の目ずしの寅 虎仲間が、ちょいと寿司でもつまもうかと来ましたが、屋号は蛇の目、これは朝鮮出兵の時に虎退治で名を上げた加藤清正の紋所で、虎にとっては怖い存在、みんなびっくり、逃げるしかありません。虎は蛇の目傘も嫌ったのでしょう。雨に遭っ…

浮世絵漫歩 4 歌川国芳の道外十二支1

歌川国芳 道外十二支(どうけじゅうにし) 歌川国芳は寛政9年(1797)生まれ、文久元年(1861)没です。浮世絵好きの方でもあまり意識しませんが、初代歌川広重と同年の生まれです。 国芳は日本橋の染物屋の家に生まれ、初代歌川豊国に弟子入りして、国芳を名乗り…

浮世絵漫歩 3 彫師競演 

彫の極致 三代歌川豊国(天明6年<1786>ー元治元年<1864>、天保14年<1844>初代国貞から三代豊国を襲名)の「役者見立東海道五十三次」(嘉永5年<1852>以降成立)の京、右が「真柴久吉」、左が「志川五右衛門」で、歌舞伎『楼門五三桐(さんもんごさんのきり)』の…

浮世絵漫歩 2 序文2

富士三十六景 序文 歌川広重没後に出版された富士三十六景の序文を紹介します。この文から、富士三十六景が広重没後に出版されたことが判ります。色の指定は、二代広重によるかと言われています。 上段の文は原文のままの改行です。初代広重翁(しよだいひろ…

浮世絵漫歩 1 序文1

保永堂版 東海道五十三次之内の序文 浮世絵を続き絵として刊行して完結後、組にして販売する時に目録と序文を付けることがあります。個々の絵を見ることはあっても、なかなか序文には出会えませんので、ここに、保永堂版東海道五十三次の序文をご紹介します…

落語のひととせ 咄の索引

咄の索引 咄の作品名・「落語のひととせ」の通し番号と部。 あ青菜 5 夏の部2赤貝丁稚 9 秋の部2赤貝猫 9 秋の部2[秋風] 10 秋の部3明烏 2 春の部2朝顔 5 夏の部2麻のれん 6 夏の部3愛宕山 3 春の部3あたま山 3 春の部3甘酒屋 5 夏の部…

落語のひととせ 総目次

総目次 通し番号・部と通し番号・標題・咄題([ ]内は仮題) 1 口上 1 春の部1 元日 かつぎや 初夢 かつぎや 七草 七草 藪入り 藪入り 2 春の部2 初天神 初天神 初午 鹿政談のマクラ、明烏 梅見 やかんなめ 雛祭り 道具屋、雛鍔 彼岸 天王寺参り、菜刀…

落語のひととせ 14 冬の部4

餅搗き (尻餅、狂歌家主) 正月が目前となり、餅搗きをする時期になりました。二十九日に搗く餅は、九が苦につながるところから、「苦餅」と言われて嫌がられました。餅を搗くときには職人を頼み、ご祝儀を出しますから、餅搗きも縁起の行事と言えそうです…

落語のひととせ 13 冬の部3

富札 その1 (富久、火事息子) 富札は昔、寺社が修復の資金集めのために許しを受けて売り出したものです。一枚が一分で、最高賞金の一番富が千両ですから、四千倍になるということになります。富札は、売った者が誰に売ったかをきちんと控えておきます。売…

落語のひととせ 12 冬の部2

鍋物 その2 (ねぎまの殿様、居酒屋、ずっこけ) ねぎま (ねぎまの殿様) 現代の居酒屋で「ねぎま」というと「葱間」で、葱と鶏肉が交互に串に刺された焼鳥が出てくるでしょう。江戸では、葱と鮪を煮た「葱鮪」鍋のことです。ついでに、魚について、「中落…

落語のひととせ 11 冬の部1

うどん (うどんや、替り目) 江戸っ子は蕎麦を好み、表立っては饂飩を食べない振りをしました。饂飩は温まりますから、冬の夜にはうってつけなのですが、「饂飩は風を引いたときに口にするものだ」というのが、やせ我慢の江戸っ子の弁です。とすると、「お…

落語のひととせ 10 秋の部3

蕎麦 その1 (蕎麦の殿様、よいよい蕎麦) 秋は新蕎麦の季節です。 これは赤井御門守様の咄だと伝えられます。ある日、お出かけ先で蕎麦を打って振る舞われた殿様、その蕎麦の味もさることながら、蕎麦打ちの手順にすっかり感心してしまいました。早速、余…

落語のひととせ 9 秋の部2

薩摩芋 その1 (位牌屋、味噌蔵) 薩摩芋は、琉球から薩摩に伝わり、甘藷先生と呼ばれる青木昆陽が救荒用の食物として全国に広めたものです。当初は琉球芋とも呼ばれました。 赤螺屋(あかにしや)という商家は、屋号の示す通りとてもけちで、味噌汁に実を入…

落語のひととせ 8 秋の部1

名月 その1 (近江屋丁稚、柳田格之進) 秋の部を名月から始めましょう。 中秋の名月は八月十五夜です。中秋とは、江戸時代、七、八、九月が秋とされ、八月はその真ん中だから中秋という意味です。「月月に月みる月はおほけれど月みる月はこの月の月」とい…

落語のひととせ 7 夏の部4

大山参り (大山参り<百人坊主>) 江戸で山に出掛けるのは、行楽ではなく、もっぱら信仰としてでした。特に人気があったのは、相模の大山でした。当時の人は「お山をする」と言っていました。このお山参りには、まず、両国の垢離場で身を浄めて出発します。…

落語のひととせ 6 夏の部3

酢豆腐 (酢豆腐) 夏場は物が腐りやすくなります。冷蔵庫がない時代、長屋からは生鰯を買ったお神さんの「おまえさん、ぽかときているんだよ、早くさばいておくれ」という声が聞こえてきます。暑気払いと理由を付けて一杯やっていた若い者一同、もう日が高…

落語のひととせ 5 夏の部2

夏祭り その1 (百川) どこの土地にも祭り好きの人はいますが、江戸っ子も祭り好きでした。そこに目立ちたがりが加わって、ついつい派手が度を超すこともあったようです。いよいお祭りが近くなったある日、日本橋浮世小路の百川という料理屋の二階に、魚河…

落語のひととせ 4 夏の部1

端午 その1 (菖蒲売り、人形買い) 井原西鶴の『好色一代男』は、「桜も散るに嘆き、月も限りありて入佐山(いるさやま)」と書き出していまして、いつか季節は移ります。いよいよ夏に入ります。正月から三月が春、四月から夏、ほととぎすは夏の鳥だから春に…

落語のひととせ 3 春の部3

花見 その1 (花見酒) 花と言えばやはり桜、桜が咲くと人の心はぱっと浮き立ちます。「梅は咲いたか、桜はまだかいな。山吹ゃ浮気で色ばっかり、しょんがいな」という唄の通り、桜の咲くのを人々は待ち兼ねています。ちらほらでも咲き始めれば、「銭湯で上…

落語のひととせ 2 春の部2

初天神 (初天神) 正月にはいろいろな初の付く行事がありますが、咄になっているのは初天神です。天神様、菅原道真公は二月二十五日が命日なので、毎月二十五日が天神様の縁日になっていて、年の初めの最初の縁日の一月二十五日を初天神と言います。亀戸の…

落語のひととせ 1 口上 ならびに春の部1

口 上 落語とは、江戸時代に成立したすばらしい口承文芸です。語る、ではなく話す芸です。難しい言葉で言うと、舌耕文芸と申します。 ところで、この落語という語はどうやって生まれたのでしょう。そもそも成立当初は「はなし」と呼ばれました。落語の世界で…

蛙の草紙 福福亭とん平の意訳

作品名から考えると、蛙が主人公のようですが、鳥獣戯画に見られるような蛙が活躍する話ではありません。話を読んでみたら、民話から落語が生まれるという流れが感じられましたので、後ろに蛇足を加えました。 蛙の草紙 ある富貴な人がいました。どうしたこ…

竹生島の本地 福福亭とん平の意訳

鏡男が迷い込んだ家に、時においでになるという竹生島の弁財天が人間であった時の話を語ります。竜女が成仏したという女人往生を説く法華経五の巻が出て来ますが、『更級日記』の著者は、夢に出て来た僧に、物語にうつつを抜かさずに、「法華経五の巻を疾く…

鏡男絵巻 福福亭とん平の意訳

鏡の無い国のお話を意訳します。最後にご参考までに落語だけを付けておきます。その他の関連作品はお探しください。 鏡男絵巻 昔、近江の国の山奥の里に、貧しい男が住んでいました。男は、これまで都の文物を見ていないのは残念だと、都へ上りました。都で…

一寸法師 福福亭とん平の意訳

丈一尺の『小男の草子』の続きとして、今度は、その十分の一の丈の、誰でも知っている『一寸法師』を当たり前のように並べてみます。一寸法師が能力を持った特別の存在ではなく、ただの異形の者と思われていて、打出の小槌の能力によって幸いになるのが、『…

小男の草子 福福亭とん平の意訳

物語には、神仏が人間であった時代の出来事を語り、こうして神になるという作品がありまして、「本地もの」と呼ばれています。そのような作品を一つ、取り上げてみました。地方出の男が、どこで身に付けたか和歌に堪能であるというのは、『物くさ太郎』とも…

ささやき竹 福福亭とん平の意訳

『地蔵堂草紙』では、お坊さんも欲望のある人間であると語られていました。同じような笑い話を拾いました。 ささやき竹 昔、河内国の前の役人で、刑部左衛門(ぎょうぶさえもん)よしちかという裕福な人がいました。年をとっても子供がありませんでした。屋敷…

地蔵堂草紙 福福亭とん平の意訳

『天稚彦草子』を紹介した時に少し触れたので、ここに掲げておきます。発端は『日本霊異記』に見られる僧の欲望、中間は浦島太郎のような異界訪問、そして最後の変身が『天稚彦草子』と、三つの作品の要素が重なっています。 地蔵堂草紙 時は昔のこと、越後…