2024-01-01から1年間の記事一覧

説経かるかや 6 福福亭とん平の意訳

かるかや 6 与次殿は、石堂丸様がお山から下られるのと、不動坂で出会いました。与次殿は石堂丸様のお姿をご覧になり、「さて、そこに下りてくるそなたは、昨日母上がお亡くなりになったということがお山まで伝わって、そのために卒塔婆を担いで来たのであ…

説経かるかや 5 福福亭とん平の意訳

かるかや 5 奥方様は与次殿の話をお聞きになり、「それでは、私はお山に上ることは叶わないのか、悲しいこと、あの子一人で上らせようか。しかしながらあの子はね、私のお腹の中で七か月半の時に重氏殿に捨てられた赤子のことだから、実の父の重氏殿に尋ね…

説経かるかや 4 福福亭とん平の意訳

かるかや 4 予次殿はこの奥方様の言葉に、「もうしもうし、旅の奥様、あなた様はこの高野のお山の厳しい禁制をご存じでそう仰せなのですか。ご存じなくて仰っておいでのようですね。そもそもこの高野の雄山は、都を離れること四百里の場所で、女人は決して…

説経かるかや 3 福福亭とん平の意訳

かるかや 3 ああ、なんとも申しようがございませんが、苅萱殿は高野山へとお着きになり、そこで谷川の水を汲んでは、花を摘んで香を供えて朝夕に念仏を唱えて、仏道に打ち込んでいらっしゃいました。 ここまでは苅萱道心殿の物語でしたが、これはさておき、…

説経かるかや 2 福福亭とん平の意訳

かるかや 2 ああお気の毒なる重氏殿は、新黒谷にお着きになりましたが、上下さまざまな身分の方がお参りになって混雑しているその中を、雑踏をかき分け、お堂の正面にお参りにおいでになって、「これ申しお上人様、お願いですが、私に仏縁を結んでください…

説経かるかや 1 福福亭とん平の意訳

かるかや 1 これから語ります物語は、信濃の国善光寺の奥の御堂に、親子地蔵とお姿を顕されているお地蔵様の由来を詳しく説いてお聞かせ申すと、このお二人もかつては人間でございました。この主人公は、国は大九州筑前の国、苅萱の庄の加藤左衛門重氏殿で…

琴腹 福福亭とん平の意訳

琴腹 後一条院の御治世の時、中宮のお部屋に立てられていた琴の腹に鼠が子を産んだので、お仕えしている人たちが、これは一大事と言い合っていたところ、天皇様も、「このようなことは、先例が多くあることか」と、殿上人たちにお尋ねになりました。「置いて…

和泉式部 福福亭とん平の意訳

和泉式部 昔、一条院の御治世、栄える京の都に、和泉式部という優美な女房が一人いました。内裏には橘(たちばなの)保(ほう)昌(しよう)保(やす)昌(まさ)という優美な男性が一人いました。保昌は十五歳、和泉式部は十三歳という年頃から愛し合い、和泉式部が十…

師門物語 下 福福亭とん平の意訳

師門物語 下 冷泉は、「さあさあお急ぎ下さい」と浄瑠璃御前を促しますが、「次の土地はどこの国のどこか判らないで、ただ『よしみつ寺』と尋ねても、いったいどこの誰がよしみつ寺はどこの国のどの場所だと詳しく教えてくれるのだろうか」とお泣きになりま…

師門物語 中 福福亭とん平の意訳

師門物語 中 浄瑠璃御前はお気の毒に、師門公が討たれたとお聞きになってから思いに沈み、三迫で自害しようと思い定められのではございますが、お付きの冷泉が考えがあるからと言ったことで、「安直な考えに進んで、つらいことを重ねる悲しさよ」と嘆いてい…

師門物語 上 福福亭とん平の意訳

師門物語 上 師門物語 意訳 さて、灯火は消える前に光が増す。人は死ぬ前に悪念が起こる。そのような世の中、朝には精気に溢れて人生を誇っていても、夕暮れには白骨となって野の外れに朽ちる無常の世である。 さてさて平の将門公は、まことに不思議の力を持…