落語

落語十二支

はじめに 少し昔のこと、落語について一時間ほど、何か楽しい話をせよ、とのご指名をいただきました。そもそも落語の発生が、戦国時代に出陣した大名は、戦闘のない時には退屈でしかたがありません。そこで、話の上手な者に楽しい話をさせました。この退屈を…

落語のひととせ 咄の索引

咄の索引 咄の作品名・「落語のひととせ」の通し番号と部。 あ青菜 5 夏の部2赤貝丁稚 9 秋の部2赤貝猫 9 秋の部2[秋風] 10 秋の部3明烏 2 春の部2朝顔 5 夏の部2麻のれん 6 夏の部3愛宕山 3 春の部3あたま山 3 春の部3甘酒屋 5 夏の部…

落語のひととせ 総目次

総目次 通し番号・部と通し番号・標題・咄題([ ]内は仮題) 1 口上 1 春の部1 元日 かつぎや 初夢 かつぎや 七草 七草 藪入り 藪入り 2 春の部2 初天神 初天神 初午 鹿政談のマクラ、明烏 梅見 やかんなめ 雛祭り 道具屋、雛鍔 彼岸 天王寺参り、菜刀…

落語のひととせ 14 冬の部4

餅搗き (尻餅、狂歌家主) 正月が目前となり、餅搗きをする時期になりました。二十九日に搗く餅は、九が苦につながるところから、「苦餅」と言われて嫌がられました。餅を搗くときには職人を頼み、ご祝儀を出しますから、餅搗きも縁起の行事と言えそうです…

落語のひととせ 13 冬の部3

富札 その1 (富久、火事息子) 富札は昔、寺社が修復の資金集めのために許しを受けて売り出したものです。一枚が一分で、最高賞金の一番富が千両ですから、四千倍になるということになります。富札は、売った者が誰に売ったかをきちんと控えておきます。売…

落語のひととせ 12 冬の部2

鍋物 その2 (ねぎまの殿様、居酒屋、ずっこけ) ねぎま (ねぎまの殿様) 現代の居酒屋で「ねぎま」というと「葱間」で、葱と鶏肉が交互に串に刺された焼鳥が出てくるでしょう。江戸では、葱と鮪を煮た「葱鮪」鍋のことです。ついでに、魚について、「中落…

落語のひととせ 11 冬の部1

うどん (うどんや、替り目) 江戸っ子は蕎麦を好み、表立っては饂飩を食べない振りをしました。饂飩は温まりますから、冬の夜にはうってつけなのですが、「饂飩は風を引いたときに口にするものだ」というのが、やせ我慢の江戸っ子の弁です。とすると、「お…

落語のひととせ 10 秋の部3

蕎麦 その1 (蕎麦の殿様、よいよい蕎麦) 秋は新蕎麦の季節です。 これは赤井御門守様の咄だと伝えられます。ある日、お出かけ先で蕎麦を打って振る舞われた殿様、その蕎麦の味もさることながら、蕎麦打ちの手順にすっかり感心してしまいました。早速、余…

落語のひととせ 9 秋の部2

薩摩芋 その1 (位牌屋、味噌蔵) 薩摩芋は、琉球から薩摩に伝わり、甘藷先生と呼ばれる青木昆陽が救荒用の食物として全国に広めたものです。当初は琉球芋とも呼ばれました。 赤螺屋(あかにしや)という商家は、屋号の示す通りとてもけちで、味噌汁に実を入…

落語のひととせ 8 秋の部1

名月 その1 (近江屋丁稚、柳田格之進) 秋の部を名月から始めましょう。 中秋の名月は八月十五夜です。中秋とは、江戸時代、七、八、九月が秋とされ、八月はその真ん中だから中秋という意味です。「月月に月みる月はおほけれど月みる月はこの月の月」とい…

落語のひととせ 7 夏の部4

大山参り (大山参り<百人坊主>) 江戸で山に出掛けるのは、行楽ではなく、もっぱら信仰としてでした。特に人気があったのは、相模の大山でした。当時の人は「お山をする」と言っていました。このお山参りには、まず、両国の垢離場で身を浄めて出発します。…

落語のひととせ 6 夏の部3

酢豆腐 (酢豆腐) 夏場は物が腐りやすくなります。冷蔵庫がない時代、長屋からは生鰯を買ったお神さんの「おまえさん、ぽかときているんだよ、早くさばいておくれ」という声が聞こえてきます。暑気払いと理由を付けて一杯やっていた若い者一同、もう日が高…

落語のひととせ 5 夏の部2

夏祭り その1 (百川) どこの土地にも祭り好きの人はいますが、江戸っ子も祭り好きでした。そこに目立ちたがりが加わって、ついつい派手が度を超すこともあったようです。いよいお祭りが近くなったある日、日本橋浮世小路の百川という料理屋の二階に、魚河…

落語のひととせ 4 夏の部1

端午 その1 (菖蒲売り、人形買い) 井原西鶴の『好色一代男』は、「桜も散るに嘆き、月も限りありて入佐山(いるさやま)」と書き出していまして、いつか季節は移ります。いよいよ夏に入ります。正月から三月が春、四月から夏、ほととぎすは夏の鳥だから春に…

落語のひととせ 3 春の部3

花見 その1 (花見酒) 花と言えばやはり桜、桜が咲くと人の心はぱっと浮き立ちます。「梅は咲いたか、桜はまだかいな。山吹ゃ浮気で色ばっかり、しょんがいな」という唄の通り、桜の咲くのを人々は待ち兼ねています。ちらほらでも咲き始めれば、「銭湯で上…

落語のひととせ 2 春の部2

初天神 (初天神) 正月にはいろいろな初の付く行事がありますが、咄になっているのは初天神です。天神様、菅原道真公は二月二十五日が命日なので、毎月二十五日が天神様の縁日になっていて、年の初めの最初の縁日の一月二十五日を初天神と言います。亀戸の…

落語のひととせ 1 口上 ならびに春の部1

口 上 落語とは、江戸時代に成立したすばらしい口承文芸です。語る、ではなく話す芸です。難しい言葉で言うと、舌耕文芸と申します。 ところで、この落語という語はどうやって生まれたのでしょう。そもそも成立当初は「はなし」と呼ばれました。落語の世界で…