資料:江戸のしりとり歌 福福亭とん平

 江戸のしりとり歌

題に「江戸の」とついているのは、もちろん土地としての江戸の意味です。8句目にある桂文治は、慶応2年(1866)に6代目を襲名して、そのころはやったしりとり歌です。祖母から聞いたものなので、通行の文献と違っているところもあると思います。

つなぐかもじに大象もとめる」で終わっている資料が多いですが、こちらは「とまる」となっていて、さらに続きがあります。

 

牡丹に唐獅子竹に虎 虎を踏んまえ和唐内
内藤さまは下がり藤 富士見西行後ろ向き
むきみ蛤馬鹿はしら 柱は二階と縁の下
下谷上野の山かつら 桂文治ははなし家で   
でんでん太鼓に笙の笛 閻魔は盆とお正月
勝頼さまは武田菱 菱餅三月雛まつり
まつり万灯山車屋台 鯛に鰹に蛸まぐろ
ろんどん異国の大港 登山するならお富士山
三べんまわつて煙草にしよ 正直正太夫伊勢の事
琴に三味線笛太鼓 太閤さまは関白ぢや
白蛇の出るのは柳島 縞の財布に五十両
五郎十郎曾我兄弟 鏡台針箱たばこ盆
坊やはいい子だねんねしな 品川女郎衆は十匁
十匁の鉄砲二つ玉 玉屋は花火の大元祖
宗匠の出るのは芭蕉庵 あんかけ豆腐に夜鷹そば
相場のお金がどんちやんちやん ちやんやおつかあ四文おくれ
お暮が過ぎたらお正月 お正月の宝船
宝船には七福神 神功皇后武の内
内田は剣菱七つ梅 梅松桜は菅原で
藁で束ねし投げ島田 島田金谷は大井川
可愛けりやこそ神田から通ふ 通ふ深草百夜の情け
酒と肴は三百出しやままよ ままよ三度笠横ちよにかぶり
かぶり振り振り相模女 女やもめに花が咲く
咲いた桜になぜ駒つなぐ つなぐかもじに大象もとまる」

丸い玉子も切りよで四角 角にや出やせぬ窓の月
月の八日はお薬師さまよ よろひかぶとに槍一本
ほんに小粋でよい男 どこだの達磨の縁の下
舌切り雀はちうちうで 忠義は大星由良之助
すけ(典侍)の局は壇の浦 裏の窓から蒟蒻玉投げた
投げた枕にとがはない 泣いてだますは女郎の手管
九段の坂は飯田町 松は高砂首尾の松
つまらないとて悪気は出すな 波に千鳥に鶴には日の出
でたらめ万八嘘八百 百ぢや世間が渡られぬ
濡れ手で粟のつかみどり 見取り選り取り何でも四文
紋はたしかに三ツ柏 私や本郷へ行くわいな
田舎者ぢやと云はんすけれど 止めて止まらぬ色の道
ちろりとつくり酒のかん 神田鍛冶町でかねたたく
苦界十年花ごろも ころもの喧嘩に親が出た
旅は道連れ世は情け