小倉百人一首もじり歌2 福福亭とん平

小倉百人一首 50~100

かくとだにえやはいぶきのさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを 藤原実方朝臣
 かくとだに知らず迎えた新学年 熱き思ひで学び求むる
明けぬれば暮るるものとは知りながら なほうらめしき朝ぼらけかな
                               藤原道信朝臣
 離れても心は一つと知りながら なほ恨めしき三密回避
嘆きつつひとり寝る夜の明くる間は いかに久しきものとかは知る 右大将道綱母
 卒論を一人まとめる我が身には いかにもいたき図書館休館
忘れじの行く末まではかたければ 今日を限りの命ともがな     儀同三司母
 忘れまいこれまで聞いた言い逃れ 募集と募るもその一つかな
滝の音は絶えて久しくなりぬれど 名こそ流れてなほ聞こえけれ   大納言公任
 加計のことは昔語りになりぬれど 獣医学部は今いかがなる
あらざらむこの世のほかの思ひ出に 今ひとたびの逢ふこともがな  和泉式部
 秋葉原アイドルライブの思ひ出に グッズ引き出しおうちで遊ぶ
めぐりあひて見しやそれともわかぬ間に 雲がくれにし夜半の月かな 紫式部
 責任をとれば良いものではないと 開き直りし総理会見
有馬山猪名の笹原風吹けば いでそよ人を忘れやはする       大弐三位
 あまりにも自粛の風が吹き荒れて 飲食店は本業忘る
やすらはで寝なましものをさ夜更けて かたぶくまでの月を見しかな 赤染衛門
 沖縄の地盤緩くて辺野古沖 柱傾き役には立たず 
大江山いく野の道の遠ければ まだふみもみず天の橋立       小式部内侍
 拉致問題相手の態度堅ければ まだ踏み込めぬ半島の北
いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな      伊勢大輔
 いにしへの奈良の御代には天然痘 今日ウイルスに悩みぬるかな
 
夜をこめて鳥のそらねははかるとも よに逢坂の関はゆるさじ    清少納言
 内閣をあげて決定するとても 世に許すまじ解釈変更
今はただ思ひ絶えなむとばかりを 人づてならで言ふよしもがな  左京大夫道雅
 今はただ流行終息するまでは 仕事させると内閣に言ふ
朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに あらはれわたる瀬々の網代木   権中納言定頼
 我が国の基本生活防衛の 切り捨て政策あらはれにけり
恨みわびほさぬ袖だにあるものを 恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ   相模
 大枚の袖の下出し招致をし 五輪朽ち行き名だけ残れり
もろともにあはれと思へ山桜 花よりほかに知る人もなし     前大僧正行尊
 もろともにあはれと思へタピオカ屋 乱立過ぎて寄る人もなし
春の夜の夢ばかりなる手枕に かひなく立たむ名こそ惜しけれ    周防内侍
 夢運ぶリニアモーター新幹線 誰が乗るのか工費惜しけれ
心にもあらでうき世にながらへば 恋しかるべき夜半の月かな    三条院
 心にも無くて料理を褒めたれば 同じ料理で茶漬け恋しき
嵐吹くみ室の山のもみぢ葉は 竜田の川の錦なりけり        能因法師
 嵐解散これから先のジャニーズは 文春砲の餌食なりけり
さびしさに宿を立ち出でてながむれば いづこも同じ秋の夕暮れ   良暹法師
 貧しさよ調整検討繰り返す いつも変わらぬ政府の対応
 
夕されば門田の稲葉おとづれて 芦のまろやに秋風ぞ吹く     大納言経信
 町中の自粛警察追い散らし 人の心に春風よ吹け
音に聞く高師の浜のあだ波は かけじや袖のぬれもこそすれ  祐子内親王紀伊
 声高く提案九月新学期 どこかに無理の生じこそすれ
高砂の尾の上の桜咲きにけり 外山の霞立たずもあらなむ     権中納言匡房
 新宿の御苑の桜咲いたとて 後援会の人は呼ぶまじ
憂かりける人を初瀬の山おろしよ はげしかれとは祈らぬものを   源俊頼朝臣
 憂かりける個人番号ありけれど カード作ると思はぬものを
契りおきしさせもが露を命にて あはれ今年の秋もいぬめり     藤原基俊
 せっかくの幼児教育無償化も あはれ休園いつまで続く
わたの原漕ぎ出でて見れば久方の 雲居にまがふ沖つ白波
                        法性寺入道前関白太政大臣
 すき腹を抱えて出れば食堂は 皆持ち帰り軽減税率
瀬をはやみ岩にせかるる滝川の われても末にあはむとぞ思ふ    崇徳院
 いらだちて煽り運転する者は 逃げても末に捕まると知れ
淡路島かよふ千鳥の鳴く声に いく夜寝覚めぬ須磨の関守      源兼昌
 朝早く通ふしかないサラリーマン またも撮られぬ品川改札
秋風にたなびく雲の絶え間より もれ出づる月の影のさやけさ   左京大夫顕輔
 半島をめぐる情報あれこれに 漏れ出る噂すべてあやしき
長からむ心も知らず黒髪の 乱れて今朝は物をこそ思へ      待賢門院堀河
 長からむ授業準備も知らずして 遅刻学生教員を思へ
ほととぎす鳴きつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる   後徳大寺左大臣
 J(ジェイ)アラート鳴りつる音に驚けば ただ誤動作の知らせ届けり
 
思ひわびさても命はあるものを 憂きにたへぬは涙なりけり     道因法師
 ニセ情報さても在庫はあるものを 並べきれぬは買い占めのゆゑ
世の中よ道こそなけれ思ひ入る 山の奥にも鹿ぞ鳴くなる   皇太后宮大夫俊成
 カーナビで道が判らず迷ひ入る バージョンアップ常に行え
長らへばまたこのごろやしのばれむ 憂しと見し世ぞ今は恋しき  藤原清輔朝臣
 長らへば大事にされた高齢者 嬉しくないぞ今は邪魔者
夜もすがら物思ふころは明けやらで 閨のひまさへつれなかりけり  俊恵法師
 夜もすがら物思ふことはあらずして 暇な閣僚つれなかりけり
嘆けとて月やは物を思はする かこち顔なるわが涙かな       西行法師
 嘆けとて政治家物を思はする 無責任なる面構えかな
村雨の露もまだひぬ槙の葉に 霧立ちのぼる秋の夕暮れ       寂蓮法師
 定年の期日まだ来ぬその前に 規定を変える検察人事
難波江の芦のかりねのひとよゆゑ みをつくしてや恋ひわたるべき 皇嘉門院別当
 自らに好都合なる事案ゆゑ 説明尽くすと韜晦すべし
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば 忍ぶることのよわりもぞする  式子内親王
 支持率は下がらば下がれ辞めざれば 非難の声はやがて弱らん
見せばやな雄島のあまの袖だにも ぬれにぞぬれし色はかはらず  殷富門院大輔
 ご覧あれ祖父の代から悲願なる 改憲意識今も変はらず
 
きりぎりす鳴くや霜夜のさ筵に 衣かたしきひとりかも寝む
                           後京極摂政前太政大臣
 ぎりぎりになるか課題の提出は 問題難く一人では無理
わが袖は潮干に見えぬ沖の石の 人こそ知らねかわく間もなし    二条院讃岐
 我が友と表に見えぬつながりで 人に知られぬ便宜山ほど
世の中は常にもがもな渚こぐ あまの小舟の綱手かなしも      鎌倉右大臣
 答弁は常にもがもが字も読めず 地方創生大臣哀し
み吉野の山の秋風さ夜更けて ふるさと寒く衣うつなり       参議雅経
 当てにした残業手当は今無くて 懐寒くパソコン閉じる
おほけなくうき世の民におほふかな わが立つ杣に墨染の袖    前大僧正慈円
 何気なく周囲の者に匂はせて 己の立場に忖度を待つ
花さそふ嵐の庭の雪ならで ふりゆくものはわが身なりけり   入道前太政大臣
 友誘ふ同級生の声なくて 距離取り通ふ時差通学へ
来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身もこがれつつ   権中納言定家
 二度と来ぬインバウンドの外国人 爆買い頼りの身を削りつつ
風そよぐならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける    従二位家隆
 疑惑だと騒がれ議員の当選は みそぎが済みし証ではなしし
人も惜し人も恨めしあぢきなく 世を思ふゆゑに物思ふ身は     後鳥羽院
 人に恥ぢ人に恨まれ情けなし 世を斜(はす)に見て詠(うた)ふこの身は
ももしきや古き軒端のしのぶにも なほあまりある昔なりけり    順徳院
 百千人(ももちたり)縁(えにし)を結ぶ人々に 幸多かれと祈る今宵ぞ
 
 以上、なるべく同じ題材にならないように百首を読み替えてみました。
 百首目は、文学作品の伝統に倣って、祝福の歌です。
 初案は「あちこちにほころび見えしこの国のなほ懐かしき昔なりけり」です。
 この作、藤原清輔朝臣の「長らへばまたこのごろやしのばれむ 憂しと見し世ぞ今は恋しき」にも当てられます。『小倉百人一首』は藤原定家の秀作選とは言われますが、内容が似た歌があるのがよくわかりました。
 
 今回、最初に練習した作品を付録とします。
八雲立つ出雲八重垣妻籠(ご)みに 八重垣作るその八重垣を     須佐之男
 万全の予防をしたる人混みに 目くじら立てる自警過剰ぞ
ひむがしの野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ 柿本人麻呂
 米国製特効薬を承認し かへり見すれば武器買ひ込みぬ
東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ     菅原道真
 朝ごとに思い起こせよ政治家よ 選挙なしとて民を忘るな