千曲川旅情の歌 福福亭とん平

近代詩

   千曲川旅情の歌           森まさ子苦渋の歌
       島崎藤村             白けた答弁
小諸なる古城のほとり       心なき言葉をつらね
 雲白く遊子悲しむ         空虚なる答弁重ぬ
緑なす蘩蔞(はこべ)は萌えず    提出の法案通らず
 若草も藉(し)くによしなし     廃案も今はやむなし
しろがねの衾の岡辺        繰り返す上辺の言葉
 日に溶けて淡雪流る        皆すべり冷や汗流る
あたたかき光はあれど       首相から慰留はあれど
 野に満つる香も知らず       世に満てる批判この身に
浅くのみ春は霞みて        官僚のメモのみ読みて
 麦の色わずかに青し        顔の色わずかに青し
旅人の群はいくつか        官邸の意向に沿ひて
 畠中の道を急ぎぬ         訂正の言を急ぎぬ
暮れ行けば浅間も見えず      一人居れば助けも寄らず
 歌哀し佐久の草笛         役哀し法務大臣
千曲川いざよふ波の        本日も委員会での
 岸近き宿にのぼりつ        詰問の席に呼ばれて
濁り酒濁れる飲みて        たどたどしく答へ返して
 草枕しばし慰む          渋面はしばしマスクに

 

検事の定年延長法案(廃案)、検事長の麻雀賭博とそれに伴う処分の答弁が食い違うということを題材にして、答弁ー修正という繰り返しの法務大臣を記録しました。