小倉百人一首もじり歌1 福福亭とん平

小倉百人一首 1~50

 今度は、和歌を題材に読み替えてみることにしました。

 最初は、与謝野晶子の歌などで試作しましたが、きりが無いのでまとまった数の作品にしました。せっかくなので、晶子の歌もここに記しておきます。

やは肌のあつき血汐にふれも見で さびしからずや道を説く君 (みだれ髪)
 国民の熱き心に応えせず 空しからずや政治(まつり)執る人

 

 では、藤原定家の『小倉百人一首』の50番までと拙作を十首ずつ区切って掲げます。
  

秋の田のかりほの庵の苫をあらみ わが衣手は露にぬれつつ     天智天皇
 秋来れば借入金の額を増し 我が商売は赤字まみれに
春すぎて夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ天の香具山        持統天皇
 客無くて夜は更けるらしテーブルの 埃払ひぬ駅前飲み屋
あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む  柿本人麻呂
 客引きのカモ誰一人見当たらず とぼとぼ帰り実入りなく寝る
田子の浦にうち出でてみれば白妙の 富士の高嶺に雪は降りつつ   山部赤人
 宣言を発出すれば世の中の 民の暮らしは苦にまみれつつ
奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の 声きく時ぞ秋は悲しき        猿丸太夫
 壇上でモニター読みゐる大臣の 声聞く度の民の空しさ
かささぎの渡せる橋におく霜の 白きをみれば夜ぞふけにける    中納言家持
 いささかに渡されるマスク小さくて 白さを見ても腹立ちにけり
天の原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出でし月かも      安倍仲麿
 アマゾンの仕入れ在庫はかすかにて 在庫の山に泣ける版元
わが庵は都のたつみしかぞすむ 世をうぢ山と人はいふなり     喜撰法師
 我が妻はまことに自由楽に住む 世にあきれたと人は言ふとか
花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに 小野小町
 生活は変はりにけりな新基準 人情いや減る自粛せし間に
 
これやこの行くも帰るも別れては 知るも知らぬも逢坂の関     蝉丸
 これやこの見るも見ないも判らずに 単位与へる遠隔(リモート)授業
わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと 人には告げよ海人の釣舟    参議篁
 PCR全力挙げて検査すると 口では告げる政府の答弁
天つ風雲の通ひ路吹き閉ぢよ をとめの姿しばしとどめむ      僧正遍照
 異国との渡航の道を皆閉ぢよ コロナの感染しばしとどめむ
筑波嶺の峰より落つる男女川 恋ぞつもりて淵となりぬる      陽成院
 雇用者の枠から漏れる非正規の 仕事探してウーバーとなる
陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに 乱れそめにしわれならなくに    河原左大臣
 パチンコの営業禁止なきゆゑに 通ひ止まらぬ言い訳にする
君がため春の野に出でて若菜つむ わが衣手に雪は降りつつ     光孝天皇
 人のため今日も現場で働ける 医療従事者に賞賛やまず
たち別れいなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば今帰り来む    中納言行平
 感染し病の床に臥せる人 早全快し皆帰り来よ
ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは   在原業平朝臣
 法相の声は聞かれず定年を どさくさ紛れに延ばす算段
住の江の岸による波よるさへや 夢の通ひ路人めよくらむ     藤原敏行朝臣
 ストレスの積もる量さへだんだんに 鬱憤晴らしに人暴れ行く
難波潟みじかき芦のふしの間も 逢はでこの世を過ぐしてよとや   伊勢
 難波なる府知事政府に不信感 独自の道を歩まんとかや
わびぬれば今はた同じ難波なる みをつくしても逢はむとぞ思ふ   元良親王
 我が国はこの先さらに赤字なり 身を尽くしてと思はぬ大臣(おとど)
 
今来むと言ひしばかりに長月の 有明の月を待ち出づ(でつ)るかな  素性法師
 もうすぐと言ひしばかりにスポーツの 開幕の日を待ち兼ねるかな
吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風を嵐といふらむ     文屋康秀
 世界中感染の嵐吹きぬれば もはや五輪は断念と言へ
月見ればちぢにものこそ悲しけれ わが身一つの秋にはあらねど   大江千里
 顔見ればひたすらものの哀しけれ 直接選んだ首領(ドン)にはあらねど
このたびはぬさもとりあへず手向山 紅葉の錦神のまにまに     菅家
 このたびはまずは申請給付金 振り込み時期は官の仕事ぞ
名にしおはば逢坂山のさねかづら 人にしられでくるよしもがな   三条右大臣
 名前だけ物々しいが財務省 人に知られず改竄重ねて
小倉山峰のもみぢ葉心あらば 今ひとたびのみゆき待たなむ     貞信公
 政権の中枢に巣くう参事官 民の心を汲みてあらなむ
みかの原わきて流るる泉川 いつ見きとてか恋しかるらむ      中納言兼輔
 平穏に盛り場歩く光景が かつてありしと恋しき日々よ
山里は冬ぞさびしさまさりける 人目も草もかれぬと思へば     源宗于朝臣
 経営は今や厳しさまさりけり 顧客は遥か離れ行きけり
心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花      凡河内躬恒
 あてにして頼りにしたいリーダーの 耳疑わせる誤読会見
有明のつれなく見えし別れより あかつきばかり憂きものはなし   壬生忠岑
 答弁のつれなく聞こえる財務相 あの声ほどに憂きものはなし
 
朝ぼらけ有明の月と見るまでに 吉野の里に降れる白雪       坂上是則
 発熱で四日様子を見るうちに それは誤解と逃げる答弁
山川に風のかけたるしがらみは 流れもあへぬ紅葉なりけり     春道列樹
 友人を大事に思うしがらみを 知れても顔は紅葉ならざる
ひさかたの光のどけき春の日に 静心なく花の散るらむ       紀友則
 夕方の心のどかなひとときに 自粛要請心なく響く
誰をかも知る人にせむ高砂の 松も昔の友ならなくに        藤原興風
 何もかも頼りにせぬと防災相 専門家には諮問せぬまま
人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香ににほひける      紀貫之
 例年の人出は絶えて公園は 無人のままに花咲きにけり
夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを 雲のいづこに月宿るらむ     清原深養父
 人々はまだ落ち着かず暮らすとも 患者の数はやや減りにけり
白露に風の吹きしく秋の野は つらぬきとめぬ玉ぞ散りける     文屋朝康
 知らぬ間に存在消えた環境相 貫くほどの信条はなし
忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな     右近
 忘らるる言葉と思ひ誓ひしか 強い日本を取り戻すとは
浅茅生の小野の篠原しのぶれど あまりてなどか人の恋しき     参議等
 これまでの歴代首相思ひ出し 悪評すれど今は恋しき
しのぶれど色に出でにけりわが恋は 物や思ふと人の問ふまで    平兼盛
 忍ぶれど体重増せる我が体 運動せよと人勧むまで
 
恋すてふわが名はまだき立ちにけり 人知れずこそ思ひそめしか   壬生忠見
 非常事態解除の噂立てにけり 経済ばかり思ひいたりて
契りきなかたみに袖をしぼりつつ 末の松山波越さじとは      清原元輔
 貧弱な頭で知恵を絞りつつ それで高給首相補佐官
逢ひ見てののちの心にくらぶれば 昔は物を思はざりけり      権中納言敦忠
 値引きして前の価格と比べずに 払い下げたは森友だけか
逢ふことの絶えてしなくはなかなかに 人をも身をも恨みざらまし  中納言朝忠
 通勤の絶えてかなはぬテレワーク 人には見せぬ眠きまなざし
あはれともいふべき人は思ほえで 身のいたづらになりぬべきかな  謙徳公
 誰だとは言へない人が多すぎて みな悪行の大臣揃い
由良のとを渡る舟人かぢを絶え ゆくへも知らぬ恋の道かな     曾禰好忠
 当選を目指す夫婦は金渡し 行末判らぬ罪の道かな
八重葎しげれる宿のさびしきに 人こそ見えね秋は来にけり     恵慶法師
 人群れの絶えにし店の寂しきに 人情篤き客は来にけり
風をいたみ岩うつ波のおのれのみ くだけて物を思ふころかな    源重之
 人を思ひ励ます妻がいればこそ 夫は国を一筋思ふ
みかきもり衛士のたく火の夜は燃え 昼は消えつつ物をこそ思へ   大中臣能宣
 政治家の政務活動費夜使ひ いくらかかれど問題にならず
君がため惜しからざりし命さへ 長くもがなと思ひけるかな     藤原義孝
 国のため惜しからざりし命とは 現在(いま)の議員の思はぬことぞ