2024-04-04から1日間の記事一覧

説経かるかや 6 福福亭とん平の意訳

かるかや 6 与次殿は、石堂丸様がお山から下られるのと、不動坂で出会いました。与次殿は石堂丸様のお姿をご覧になり、「さて、そこに下りてくるそなたは、昨日母上がお亡くなりになったということがお山まで伝わって、そのために卒塔婆を担いで来たのであ…

説経かるかや 5 福福亭とん平の意訳

かるかや 5 奥方様は与次殿の話をお聞きになり、「それでは、私はお山に上ることは叶わないのか、悲しいこと、あの子一人で上らせようか。しかしながらあの子はね、私のお腹の中で七か月半の時に重氏殿に捨てられた赤子のことだから、実の父の重氏殿に尋ね…

説経かるかや 4 福福亭とん平の意訳

かるかや 4 予次殿はこの奥方様の言葉に、「もうしもうし、旅の奥様、あなた様はこの高野のお山の厳しい禁制をご存じでそう仰せなのですか。ご存じなくて仰っておいでのようですね。そもそもこの高野の雄山は、都を離れること四百里の場所で、女人は決して…

説経かるかや 3 福福亭とん平の意訳

かるかや 3 ああ、なんとも申しようがございませんが、苅萱殿は高野山へとお着きになり、そこで谷川の水を汲んでは、花を摘んで香を供えて朝夕に念仏を唱えて、仏道に打ち込んでいらっしゃいました。 ここまでは苅萱道心殿の物語でしたが、これはさておき、…

説経かるかや 2 福福亭とん平の意訳

かるかや 2 ああお気の毒なる重氏殿は、新黒谷にお着きになりましたが、上下さまざまな身分の方がお参りになって混雑しているその中を、雑踏をかき分け、お堂の正面にお参りにおいでになって、「これ申しお上人様、お願いですが、私に仏縁を結んでください…

説経かるかや 1 福福亭とん平の意訳

かるかや 1 これから語ります物語は、信濃の国善光寺の奥の御堂に、親子地蔵とお姿を顕されているお地蔵様の由来を詳しく説いてお聞かせ申すと、このお二人もかつては人間でございました。この主人公は、国は大九州筑前の国、苅萱の庄の加藤左衛門重氏殿で…