浮世絵漫歩 28 北斎の絵を七福神と読み解きました

ヤフオク! - 葛飾北斎(画狂老人北斎写)踊り行列図(人物図)木...

 この絵は、画狂人葛飾北斎による摺物で、「踊り図」「踊り行列」などと呼ばれています。これを七福神として読み解きをしてみました。
 この絵には、七人の人物が描かれています。七福神として読み解くと、女性が二人で少々変です。実は、江戸時代の七福神では、寿老人を外して、その代わりに吉祥天や猩々を加えることがあったと事典に書かれています。ですから、ここに女性が二人描かれているのは、弁財天と吉祥天であると読み解きができるのです。一人一人見てゆきましょう。
 さて、画面上の人物から読み解きましょう。頭巾を被っているのは大黒天です。大黒天は常に頭巾を被っていて、今まで誰も大黒天の髪型を見た人はいないのです。この形の頭巾を、大黒頭巾と言います。頭巾ときたら大黒様、は七福神を考える時の定番です。黒い頭巾では全体が暗くなるので、魔除けの赤の色にしたのでしょう。この摺物が、誰かの還暦など長寿の歳祝いの意味をこめて発注されたとも考えられます。
 大黒様が手にしている傘の模様は宝尽くしです。打出の小槌は描かれていませんが、小槌から出た万能薬の丁子、危難から身を隠す隠れ蓑、宝倉の鍵、宝の袋、宝珠が描かれています。手には末広(扇)、笑顔が絶えません。また、大坂の大黒屋で売り出した傘を大黒傘と呼び、江戸では、番傘のことを大黒傘というようになったと、辞書にあります。

 黒い着物の男性は恵比寿と読み解きます。高く伸ばした腕は、釣竿を連想させます。掌を返しているのは、大物が釣れた証と思うと、嬉しくなります。

 笠の人物は福禄寿と読み解きます。着物の模様は丸で、銭を連想させて福徳です。顔を見せずに、笠に二筋の赤い緒を描いたのは、福禄寿と寿老人の二神の合体ともとれます。なお、この踊りは、雀踊りと呼ばれます。

 その下の人物に移ります。帽子のような赤い被り物は、毘沙門天の冠を思わせますから、この人物は毘沙門天に見立てられたのでしょう。格子縞は、弁慶縞や金平縞(坂田金時の息子とされる演劇や小説の中の架空の英雄)という、力強い人物を象徴する縞でもあり、武の神としての毘沙門天を思わせます。

 その下ののんびりと腹を突き出した人物は、肥満体の布袋和尚です。笑顔で唐子と遊ぶ像がよく描かれますが、この顔は、まさに布袋和尚の笑顔です。

 二人の女性は弁財天と吉祥天です。弁財天も吉祥天も、どちらも美しい神様ですから、いずれがあやめ、かきつばた、見分けがつきません。上の顔を見せている女性が、従来の七福神として言われている弁財天のように思われます。なお、毘沙門天と吉祥天は夫婦であるとされています。

  北斎の摺物について、こんな読み解きをしてみました。この作品は、以前、津和野の葛飾北斎美術館にありましたから、現在は、島根県立美術館にあるはずです。おそらく